私が一番好きな映画は、ずっと以前から『ラストエンペラー』。
今月、その劇場上映があるので去年から楽しみにしてました。
清朝滅亡、日中戦争、中華人民共和国の成立と文化大革命…
歴史に翻弄された孤独な中国最後の皇帝、愛新覚羅溥儀。
3歳で即位直後から紫禁城や満州国での傀儡な人生。
最初のシーン“Open the door!”から、込み上げてきました。
高校生の頃、歴史の教科書で溥儀を知り、理由なくなぜかとても興味を持ってしまい、溥儀に関する本を読んだりして、尋常じゃないほど振り回される人生を知り、何かとても揺さぶられた記憶が蘇ってきました。
イタリアのベルトルッチ監督による本作は、溥儀役ジョン・ローンの知的な美しさを中心に、1シーン1シーンがアジアの艶めかしい儀式や建築美術、衣装で溢れています。
後半は戦争や革命といった流れになるため、軍服や人民服という暗いトーンになるものの、イタリア人の美学からか、そういったムードの中でも最後の最後まで魅せてくれます。
音楽は坂本龍一。
そして、奇遇なことに私が最も敬愛する音楽家である上野耕路氏がほぼ全てのオーケストレーションを手がけたという、自分にとって心のトリガーが全編に渡り潜む大作であり名作。
個人的に坂本龍一の音楽は意図的に避けて来た感はあるのですが、ラストエンペラーの旋律とハーモニーは、ベルトルッチが描く溥儀の置かれた滑稽すぎるほど孤独な環境と心情を、映画音楽として見事に昇華表現されておりました。
余韻がとても強く、とてもじゃないけれど寄り道などできない、帰りの電車で印象的なシーンを思い出しては涙ぐみそうになる挙動があったことを、ここに告白します。