100年以上の歴史を誇る、映画の街長野県上田市にある上田映劇。
長野出張の仕事が思いの外早く終わり、速攻で今一番好きな温泉、霊泉寺温泉へ。
日本の秘湯を守る会認定の、地元民ですら足を運ぶ人が少ない小さな温泉地。
隣りにある鹿教湯とも違うお湯で、自分にピッタリ来る感じ。
ひとっ風呂浴びて、映画館へ。
雰囲気のある映画館です。
今日はアイヌ映画『チロンヌㇷ゚カムイ イオマンテ』
キタキツネのイヨマンテ・ドキュメンタリー。
イヨマンテ(イオマンテ)は、ヒグマやキタキツネ、シマフクロウなどアイヌで神の使いとされている動物を生贄にした祭事のこと。
アイヌ文化の中でも最重要祭事に位置づけられる霊送り。現在は禁止されているので、実際に見ることは出来ませんが、1986年のこの映像では、ショッキングなシーンやイヨマンテの前後含めて記録されていて、民俗学的にも貴重なアーカイブなのではないでしょうか。
神の国に送られるキタキツネが人間と神の連絡通路を辿る語りを通してアイヌの世界観を展開して行く、という流れなので、学者向けドキュメンタリーではなく、子どもが見ても命の尊さを学ぶ事ができる作品。
キタキツネのつね吉は、最期完全に人間を理解したような表情と反応だったのが印象深い。
イヨマンテを行う村民が全員、何日も何日も準備を重ね、お祈りの中に「誠意を込めて行いますが、万が一失敗してもお許しください」と願う下りに、イヨマンテに相当なプレッシャーを抱いているのだ、と見ている私も緊張しました。
なぜこうもアイヌの唄や紋様、踊り、口琴に惹きつけられるのか、自分でもよくわからないのですが、本作を見終わった後はとても気持ちが落ち着きましたし、アイヌの死生観がこんなにも優しい輪廻だったとは…
イヨマンテの残酷性に観る前は気構えてましたが、なぜ彼らがイヨマンテを行うのか。自分なりに理解したからなのかな、と。
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さて、ただいま配信作品の準備をしております。その中で、初期に制作して最も気に入っている曲があるのですが、コーラスのハーモニーに少々、アイヌ系の響きを反映してしまいました。特に意識していれるわけではないのですが、インプットするものはアウトプットに間接的に、そして時間を超えて反映するものですね。今回は割と早いスパンでの反応・反映でしたが、子供のころの忘れかけた記憶や印象がここにきて急に出てくることもあるものです。この日浸かった霊泉寺温泉の摩訶不思議な心地よさだって、どこかしら音に反映しているやもしれません。
感覚、感性のコンスタレーション。実に面白いものですね。